株式会社カレントカラー


■付加価値点の時空的誤算

世の中で標準となっている様々な改革方法論の中核は、 「どういう順番で、どんな成果物を出すべきか」 「誰がどのように推進するべきか」 すなわち標準的なプロセスと体制からなる。 グローバル・デファクト標準の全てが そのような体裁をとっているという強力な証拠がある。

もちろん、これは偶然では有り得ない。 人類が知恵を絞り叡智を結集して、世界規模での膨大な検討の結果、 「このような時間的順序と、このような体制で、変革プロジェクトを遂行するべきだ」 「さもなければ失敗の可能性が高まる」という 経験則なのである。 先を急ぎ過ぎてもいけない、実行を後送りにし過ぎてもいけない。 一人に責任と権限を集中させ過ぎてもいけない、自由放任でもいけない。 これは、裏返せば、人間というものは、 結論を急ぎ過ぎることもあれば、問題を先送りにすることもあるし、 一人で何でもやりたがることもあれば、他人任せにしたくなることもある、 そういう性質を本質的に持っているということでもある。 組織の活動の中で、最適な時に最適な人が付加価値作業をするのが理想だが、 神ならぬ人間には、その最適解が見えない。 だから、せめて、失敗しないような経験則を標準化して、 少しでも不幸を減らそうとしているわけである。

近年、脳科学の発展を背景に、心理学の成果も、ますます実用的に なってきている。 人間が自己の能力を過信し「後でも解決できる」と誤算することで 問題を先送り(procrastination)してしまうことや、 組織が大きくなると「誰かがやってくれる」と誤算することで 社会的手抜き(social loafing)が発生することなどが、 科学的にも分析されている。 これらの成果を、業務改革方法論の存在の必然性に連結する モデルとして、「付加価値点の時空的誤算」というフレームワークを 試みに提示してみよう。


付加価値点の時空的誤算

モデルの構造は単純である。付加価値を生み出す作業が 行われるべき点について、最適な領域が中央にあり、 左右の軸が時間を、上下の軸が空間を表現している。 左右の時間軸は、左端が現在であり、右が未来に進んでいる。 上下の空間軸は、下端が自我(私)であり、上が他者・環境・世界へと広がっている。 つまり空間軸は、「私」を中心とする主観的世界の極座標的な広がりを意味している。 現場担当者であれ、管理職であれ、経営者であれ、 このモデルを見る人の「いま・ここ」は、常にこのモデルの最も左下に位置する。

最適な付加価値点がモデルの中央に描かれており、 そこからの「誤算」のタイプが、 マッピングされている。 時間軸では、左寄りが「焦り過ぎ」(もっと情報が得られてから行動すべきだった、等)、 右寄りが「先送りし過ぎ」(もっと早めに行動すべきだった、等)を意味する。 空間軸では、下寄りが「自分で抱え過ぎ」(もっと他人を頼れば良かった、等)、 上寄りが「他者に任せ過ぎ」(もっと自分の目で確認すれば良かった、等)を意味する。 現実の誤算は、この時間的誤算と空間的誤算の組み合わせで生じる、 というのが、このモデルが表現していることであり、 方法論は、これらの誤算を最小化するための、武道で言うところの「型」なのである。 誤算のタイプとして、四象限それぞれに名前を振ってある。

  1. 強制。適切な範囲ならば「管理型」だが、焦ったり他責志向が過ぎたりすれば 強制、独裁につながりかねない。
  2. 放任。適切な範囲ならば「調整型」だが、任せ過ぎ・先送りのし過ぎが 横行すれば、深刻な大企業病を患う。
  3. 焦燥。適切な範囲ならば「牽引型」(よい意味のリーダーシップ)だが、 自分で引き受けすぎると自滅しかねない。
  4. 過信。適切な範囲ならば「引取型」(「まぁ任せておけ」と一旦引き取る、等)だが、 引き受け過ぎ・先送りし過ぎになると、大ボラ吹きになってしまう。

作業の手順の標準化は、時間軸の誤算を小さくし、 体制の標準化は、空間軸の誤算を小さくする。

こうして、時空的誤算の要因は心理学的側面から裏付けしやすくなる。 つまり、デファクトのグローバル標準が「なぜ、そのような姿をしているのか」を この「付加価値点の時空的誤算」モデルの 何に対する訓戒なのかと結びつけやすくなる。 そして、誰に何を気付かせればいいのかが、疑問の余地なく明確になる。 この理論が、業革の完遂を志す人の、心の底からの 「わかった」「なるほど」「やってみよう」に 繋がることを切望する。


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